漫画

ソラニンを読みモノトリアムを感じる

遅まきながら少し前にソラニンという映画を観ました。

思いのほか自分自身に刺さり、原作の漫画ソラニンが気になり始めました。

そしてソラニン新装版を読みました。

よかった・・・。

ソラニン。

可愛らしい語感ですね。

タイトルだけ見たときに想像するのはちぃかわのようなキャラクターが活躍する、そんな漫画かもしれません。

【ソラニン】とはジャガイモの芽の中に含まれる毒を指した言葉です。

「芽の中に含まれる毒の成分がタイトルの漫画? どんな話なのか想像つかない・・・。」

想像できませんよね。

わたしも何となしにソラニンという映画の存在は知っていたのですがなんの話なのかなと思っていました。

それではソラニン(漫画&映画)の魅力を説明していきます。

※以下ネタバレあり

ソラニンはどんなお話?

あまり大きなネタバレはしたくないので少し抽象的な表現が増えてしまうのは申し訳ありません。

アルバイトをしながら夢を追う種田と入社2年目にして会社を辞めたOL芽衣子。

種田と芽衣子は大学の研音サークルで出会いそこから6年の付き合い。

芽衣子は今の仕事が自分のやりたいことなのか分からず退屈な日々を過ごしていました。

一方種田は就職せずアルバイトをしながらバンド仲間のベース加藤、ドラムビリーと月に2回のバンド練習の習慣だけがかろうじて残っている状態でした。

そんな何もかもが不安定な二人の人生のモラトリアムを描いたお話です。

共感できる部分もあるのだけれど、歳をとりすぎた自分には若い考え方だと思うことも。

ハッピーエンドではないですが、バッドエンドかと言われるとそうでもない。

人が死なないかと言われれば死にますし、ありきたりな話かと言われればそんな気もします。

それでもこの不安定さ、曖昧さ、向こう見ずな行動は若いころには誰にでも身に覚えがある感覚の様に思います。

若い人はとても共感できるお話かもしれないし、歳をとってからでもあの頃の自分と重ねることのできるそんな映画なのです。

種田がね、所々でいい言葉を言うんですよ。

それがとても耳障りが良くて、ただ少し頼りなくて。

わたしはそこに強く共感をしてしまうのです。

ソラニンとは勘違いから生まれたタイトル

上記でソラニン=ジャガイモの芽の毒と記述しました。

ソラニンには面白いエピソードがあります。

作者が当時お付き合いしていた彼女の勘違いの一言から生まれたタイトルなのです。

「アジカンの新しいアルバム、ソラニンっていうんだって」

しかし実際に発売されたアルバムの名前は『ソルファ』でした。

作者はソラニンの音感が気に入ったのと意味を調べたらジャガイモの芽の毒であったことも気に入りタイトルにしたそうです。

こういう裏話は総じて面白いですね。

読めばわかるタイトル【ソラニン】の秀逸さ

ソラニンがジャガイモの芽の中にある毒素成分というのを知った時に、毒の名前がタイトルって禍々しいなと思いました。

しかしソラニンを読み終わった後にはこの漫画のタイトルはソラニン以外には考えられないと感じるほど、ソラニンというタイトルは逸材なのです。

たとえばゆるい幸せがだらっと続いたりする

きっと悪い種が芽を出して

もう さよならなんだ          

《漫画 ソラニンより抜粋》

上記は種田の作ったソラニンという曲の歌詞の一部ですが、悪い種が芽を出してというのは人間をジャガイモに比喩しているのでしょう。

上記したようにジャガイモの芽の中にはソラニンという毒素成分があり、ソラニンを摂取してしまうと食中毒など体に害を与えます。

芽を取らず放置していると芽はどんどん増えるため食べることのできないダメなジャガイモになってしまうのです。

なぜジャガイモはソラニンという毒素を蓄えるのか?

それは自らの繁殖の為に、外敵に食べられないようにするためではないかと考えられておりジャガイモが成長するにはソラニンは必須なのです。

芽衣子の芽、種田の種。二人の関係は夢と現実の狭間で曖昧にゆらゆらと揺れていて、ある意味現実逃避の共依存だったかもしれません。

しかしそれが毒だったとしてもジャガイモにとってのソラニンの様に大人に成長していくには必要な毒だった。

ソラニンの作中で芽衣子が【恋人の別れの曲だと思っていたけど、過去の自分との別れの曲なのかな。…そんなふうに思えてきて。】と思いふける場面があります。

 

さよならとは種田と芽衣子の別れではなく毒を飲み込み成長した自分と過去の自分との決別というのが本当の意味の様に感じます。

その方がロマンチックでいい。

あなたもソラニンを見終わった後はこの漫画のタイトルはソラニン以外考えられないと思うはずです。

実写映画も最高である

冒頭で記載したように僕は実写映画の方を先に観ました。

その後漫画を読み終わ感じたことは、忠実に漫画を再現しようとしてくれたんだでした。

特に種田役の高良健吾。

あのいつも飄々としているようでどこかプライドが高そうな感じ、いいですね。

そして種田とともに組んだバンドのベーシスト加藤役の近藤洋一はかなりのはまり役です。

近藤洋一?そんな俳優さんいたっけか?

近藤さんは俳優ではなく日本のスリーピースロックバンドサンボマスターでベースとコーラスを担当している現役のプロミュージシャンなのです。

とにかく原作の加藤とそっくりな体系、雰囲気。

芽衣子役の宮崎あおいはさすがに可愛すぎていてはまり役とは思いませんが、全体的に原作の空気感を忠実に再現していると言い切れます。

そして何より原作で浅野いにおが作詞したソラニンがASIAN KUNG-FU GENERATIONによって作曲されそれをギターを弾きながら歌う宮崎あおい。

最高のクライマックスでした。

読んでほしい、見てほしい、聞いてほしいソラニン

ソラニンは漫画として、映画として、音楽として3つの楽しみ方ができる作品だと思っています。

特に漫画は何度読んでも僕のセンチメンタルは加速しますね。

音楽としてASIAN KUNG-FU GENERATIONのソラニンは有名でソラニンを聴いたことがある人でもソラニンを読んだこと観たことのない人がいるかもしれません。

それを知ることにより曲ソラニンの捉え方が変わると思うので是非おすすめです。

皆にも是非触れてもらいたい作品ですね。